第59話:至高の対価、あるいは無料の戦慄
「また絶対呼んでね!」「最高の週末だったよ!」
玄関先で何度も手を振って、サキとチカがようやく帰っていった。
私はドアを閉めた瞬間、その場にずるずると座り込み、深い溜息を吐く。
「……終わった。なんとか、最後まで隠し通せた……のかな」
『お疲れ様でした、レイ様。ゲスト満足度は九十八パーセントを記録。
源造様の邸宅における、初の外交任務は成功と言えるでしょう』
バロがひょいと隣に現れる。私はふと、現実的な不安を口にした。
「……ねえバロ。ちょっと怖いこと聞くけど。あのフレンチに朝食。
いくらおじいちゃんの家でも、あんな豪華なものタダじゃないよね?
私の生活費、もう全部使い切っちゃったんじゃないの……!?」
『いいえ、ご安心ください。今回の諸経費は、一円もかかっておりません』
「……は? 一円も? どういうこと? まさか万引きでもしたの!?」
『失礼な。あの全自動調理器は、空気中の成分や廃棄物を原子レベルで
再構築し、あらゆる物質を生成可能。食費という概念は存在しません』
……つまり何? あの高級な肉もトリュフも、全部「元・空気」なの?
おじいちゃんの技術は、ついに錬金術の領域にまで達していたらしい。
『もっとも、最高級の栄養素を効率よく摂取されたのですから、相応の
消費が必要です。さあ、直ちに地下へ。訓練を再開いたします』
「……やっぱり、タダより高いものはないってことね……っ!」
私は、摂取したエネルギーを即座に「訓練」で回収しようとするバロに
急かされるように、恨めしげな顔で再び地下の操縦席へと向かった。




