第52話:完璧な虚偽、あるいはAIの弁明
「スマートホーム……? じゃあ、さっきのポテチもこの涼しさも?」
サキが呆然と呟くと、バロのホログラムは静かに、かつ深く頷いた。
『左様です。気圧、室温、湿度。全てはゲストのバイタルデータに基づき、
源造様が開発した「全自動快適生活維持アルゴリズム」が制御しています。
ポテチの件は、指先の清潔を保つための自動開封プログラムの誤作動です』
……バロ、あんた本当に嘘が上手いわね。
私は、バロが紡ぎ出すもっともらしい「嘘の解説」に感心すら覚えた。
『料理についても同様です。この家はキッチンそのものが巨大な調理機。
食材データベースを駆使し、無人調理を行う仕様でございます。
麗様がカレーを作られる隙を、私が奪ってしまったのは痛恨の極み……』
バロはうやうやしく頭を下げ、さらに畳み掛けるように説明を続ける。
『源造様は生前、世間に内密でこのシステムの試験運用を行っていました。
そのため、外部の方には秘匿するよう、麗様には厳命していたのです。
皆様にはご不便をおかけしましたが、源造様の研究ゆえ、ご容赦を』
「なるほど……おじいちゃん、本当にすごい技術者だったんだね」
サキたちが納得したその時、バロが流れるような動作で浴室を指し示した。
『さて皆様。ちょうどお風呂のご用意が整いました。
三名様でもゆったりと入れる広さですので、どうぞお入りください。
源造様こだわりの「究極のリラクゼーション」をお約束いたします』
「やった、お風呂! 行こう、麗!」
二人は大はしゃぎで脱衣所へ向かった。私は嫌な予感しかしないけれど、
バロの「完璧な嘘」を壊すわけにもいかず、重い足取りで後に続いた。




