第51話:AIの提案、あるいは欺瞞の極致
「……だ、誰に向かって言ったの、今? 麗、本当に大丈夫?」
サキの声が震えている。何もない空間に叫んだ私を、本気で怖がっている。
やばい、完全に壊れた子だと思われてる。私の日常が音を立てて崩れていく。
『レイ様。もはや小細工は通用しません。私に任せて頂けますか?』
脳内に響くバロの声は、いつになく冷静で、どこか自信に満ちていた。
『要するに、ガソタムの存在さえ秘匿できれば良いのですよね。
それ以外の「異常」については、私が論理的な回答を用意いたします』
(……え? どういうこと? バロ、何か名案があるの!?)
私が心の中で問い返すと、バロのホログラムが私の隣にスッと現れた。
ただし、それは執事の姿ではなく、無機質な「スマート家電」の体裁で。
『初めまして、ゲストの皆様。私は当家、および源造様が遺した、
超高性能スマートホーム管理システム「BARO」です』
「……な、何これ!? この人が喋ってるの? ホログラム!?」
サキとチカが腰を抜かさんばかりに驚く。バロは淡々と嘘を重ねていく。
『当家は、源造様が次世代住宅の実験場として構築したハイテク邸宅です。
全ての不可解な現象は、私の過剰なサービス稼働によるものです』
バロは、巨大ロボットという「本丸」を隠すため、
自分自身を「ただのやりすぎな家電AI」として差し出したのだ。
私は、バロの想定外のフォローに、呆気にとられて立ち尽くした。




