第5話:田舎の朝と、演技派な私
朝日が差し込む庭。
私は、玄関先で隣の田中さんにお辞儀をした。
「田中さん、おはようございます! いってきます」
おじいちゃんの代からお世話になっている、近所のおばあちゃんだ。
私は、自転車のペダルを元気よく漕ぎ出した。
ここは、見渡す限りの田んぼと山に囲まれた、かなりの田舎町。
おじいちゃんの家を相続して、正直、最初は不安しかなかった。
でも、田舎のおかげで、相続税は驚くほど安く済んだ。
両親が私名義でコツコツ貯めてくれた貯金。
それで、なんとか納税の壁を乗り越えることができたのだ。
生活費も、両親が毎月欠かさず仕送りをしてくれている。
……パパ、ママ。本当にありがとう。
まさかそのお金が、巨大ロボットの隠匿資金になってるとは言えないけれど。
私は風を切って、整備された一本道を走る。
この平穏な景色を壊さないためにも、地下のことは墓場まで持っていかなきゃ。
学校に到着し、昇降口でいつものように靴を履き替える。
教室のドアを開けると、クラスメイトたちの賑やかな声が響いた。
「あ、うらら! おはよー!」
「みんな、おはよう! 今日もいい天気だね」
私は満面の笑みで、友達の輪の中に入っていく。
……今の私は、どこからどう見ても普通の、性格の良い女子高生。
誰も、私の家の畳の下に、
十八メートルの『ガソタム』が眠っているなんて、夢にも思わないはず。
完璧な隠蔽。完璧な日常。
……そう、このまま一生、何事もなく終わればいいんだ。




