第49話:鉄のタイマー、あるいは光る三分
食後のまったりした空気の中、サキが調理台のバロ本体を指差した。
「ねえ麗、この置物。昔のロボットアニメに出てくるやつに似てない?
ちょっと触っていい?」
サキは答えを待たず、バロをひょいと持ち上げようとして目を見開いた。
「……うわ、重っ! 何これ、中身ギッシリ詰まってない?」
高性能メカの塊であるバロは、見た目に反してずっしりと重いのだ。
(バロ、お願いだからそのまま黙ってて……。死んだふりして!)
私が心の中で必死に祈っていると、今度はチカがバロを覗き込んだ。
「これキッチンタイマーなんだよね? ボタンもないし、どう使うの?」
「え、えーっとね! それは、その……三分セットしたい時は……」
しどろもどろの私が口走った瞬間、バロの本体から合成音声が響いた。
『了解。キッチンタイマーを三分間にセットします』
「……喋った!?」
「最近のタイマーって、音声認識なの? すご!」
二人の驚きに、私は(ごまかすのを手伝ってくれたんだ!)と安堵した。
……が、安堵したのも束の間。バロのサービス精神は止まらない。
シュン! とバロの頭頂部から光が放たれ、居間のど真ん中の空中に、
巨大なホログラムの数字『03:00』が浮かび上がり、脈動を始めた。
「ひゃあああ!? 何これ、3D映像!? 浮いてるんだけど!」
「……。あ、あはは! 最近のタイマーって、視認性が高いわよね……」
暗い部屋を赤々と照らす、無駄に高画質なカウントダウン。
私は、バロの「やりすぎな協力」に、再び頭を抱えて座り込んだ。




