第48話:至福の晩餐、あるいは脳内の説教
「あ、あはは……。とりあえず冷めないうちに食べよう! ね?」
私は強引に話を打ち切り、二人をしぶしぶ居間のテーブルへと促した。
並べられた豪華な料理を前に、サキとチカはおそるおそる口を運ぶ。
「……っ、おいしい! 何これ、お肉が口の中でとろけるんだけど!」
「ソースもすごい……。麗、本当にこれ自分で作ったの? 天才すぎ」
一口食べた瞬間に顔を輝かせる二人を見て、私はようやく胸をなで下ろした。
……そう、美味しければいいの。おじいちゃんの技術に感謝ね。
私もホッとして、付け合わせの温野菜を口に放り込み、パンを千切った。
『レイ様。不快なノイズを検知。現在行っている「三角食い」は不適切です。
フレンチにおける正しい順序を守ってください。マナー講習を行いますか?』
……っ! せっかくの美味しい食事が、脳内に響く小言で台無しだ。
私はフォークを握りしめ、虚空に向かって心の中で叫んだ。
(うるさい、黙れ! マナーなんていいの! 今は楽しく食べてるんだから!)
けれど、バロは私の抗議を無視して、視界の端に「正しい作法」を表示。
『パンは一口サイズに。スープの音を立てない。背筋を伸ばしてください。
源造様の孫として、最低限の品位を保つことは義務でございます』
「……もう、いい加減にしてよ」
思わず声が漏れてしまい、サキたちが「え? 何が?」と顔を上げた。
「あ、あはは! なんでもない! 美味しいから、どんどん食べて!」
私は引きつった笑顔で、脳内の執事を全力でシャットアウトした。




