第47話:決死の虚勢、あるいは疑念の晩餐
「大丈夫だって言ったのに……!」
私の制止も虚しく、サキとチカがキッチンのドアを開けてしまった。
二人は調理台に並ぶ銀の蓋と、漂う高級な香りに言葉を失う。
「……麗。これ、何? カレーの匂いじゃないよね、これ」
サキの呆然とした声に、私は床から飛び起き、必死に手を振った。
「あ、あはは……! これね、実は私の手作りなの! ほら、友達が
泊まりに来るから、ちょっと張り切りすぎちゃって……!」
「……牛フィレ肉にトリュフが乗ってるんだけど。女子高生が一人で、
下準備もなしに、これ全部作ったって言うの?」
チカがジロリと私の手元を見た。まな板も包丁も汚れていないし、
あるのはピカピカした謎の金属箱と、その上に乗る丸いバロのみ。
「そ、そうなの! おじいちゃんの秘伝の時短テクニックというか……。
あ、この丸いのは置物! ただのキッチンタイマーだから!」
私はバロを必死に背中に隠したが、友人たちの目はますます冷ややかだ。
涼しすぎる部屋、爆発するポテチ、そして突如現れたフレンチ。
「麗……。あんた、おじいちゃんの家を相続して一人暮らししてるんだよね?
この家、なんだか普通の女子高生の生活じゃない気がしてきた……」
サキの目が「疑惑」から「確信」に変わりつつある。
私は引きつった笑顔のまま、心の中でバロを思い切り問い詰めた。
おもてなしのつもりが、私の社会的信用をゼロにしようとしている。




