第45話:消えぬ芳香、あるいは疑惑の瞳
「あ、あはは……! 芳香剤、どこだっけ。えーっと、奥の方かな。
おじいちゃんが知り合いの調香師さんに特注したやつでさ……!」
私は、冷汗を拭いながらチカの追及を強引にかわそうとした。
本当はナノノズルから噴射されるハイテク粒子だなんて、言えるわけがない。
「特注? でも私、棚の中も見たけど、一個もボトルなんて無かったよ。
それに、さっきと今とで、微妙に香りが変わってる気がするし」
「そ、それはほら! 時間差で香りが変わる、超最新の……えっと、
ナノ……ナノテクノロジー的な? とにかく、すごく高いやつなの!」
必死に誤魔化そうとする私の言葉に、サキとチカは顔を見合わせた。
明らかに「何それ、怪しい」という、いぶかしげな視線が突き刺さる。
「麗の家ってさ、ポテチが爆発したり、エアコンないのに涼しかったり、
なんだか不思議なことばっかりだね。……本当は何か隠してない?」
『レイ様。ゲストの不信感が閾値を超えようとしています。
カモフラージュのため、これより「一般的な芳香剤」の投影を開始……』
(バロ、やめて! これ以上余計なことしたら、本当に詰んじゃう!)
私は、脳内で必死にバロに叫び、引きつった笑顔を二人に向けた。
お泊まり会開始から数時間。私の「普通」の皮は、今にも剥がれそうだった。




