第43話:真夏の要塞と、苦しい言い訳
外はセミの声が響く、夏休み目前の蒸し暑い午後。
麦茶を運び終えた私に、サキが首を傾げながら不思議そうに言った。
「ねえ麗。この家、窓もドアも締め切ってるのに、なんでこんなに涼しいの?
っていうかエアコンどこ? さっきから探してるんだけど見当たらないし」
サキの言葉に、私はハッとして居間の壁を見渡した。
……そうだ。おじいちゃんの家には、エアコンなんて一台もない。
なのに、肌をなでる空気は高原の避暑地みたいに完璧に制御されている。
『レイ様。これも源造様が開発した、全熱交換式特殊皮膜装甲の副産物です。
外気の熱を遮断し、地熱を利用して室温を常に二十五度に保ちます』
脳内に響くバロの説明に、私は「またおじいちゃんの仕業か」と脱力した。
家全体が巨大な冷却装置……。でも、友達にそんなこと言えるわけがない。
「あ、あはは……! これね、えーっと、最新の『壁埋め込み型』なの!
おじいちゃん、ああ見えて結構、機械とか新しい物好きだったから……!」
「へえー、壁の中にあるんだ。見た目じゃ全然わからないね、すごい」
サキは納得したように頷いたが、チカがジロジロと壁を触り始めた。
……やめて、そこ特殊合金だから。叩いたら金属音が響いちゃうから。
「……。でも、風も吹いてないのに涼しいなんて、魔法みたいだね」
魔法というか、原子レベルの温度制御です。
私は、おじいちゃんの「過剰な気配り」に心の中で毒づきながら、
冷たい麦茶を一気に飲み干し、なんとかその場の空気を誤魔化した。




