第42話:台所の密談、あるいは最後の通告
「あ、あはは……。ごめんね! 今、冷たいお茶入れてくるから!」
私は破裂したポテチに固まる二人を残し、逃げるように台所へ向かった。
居間から見えない位置に入るなり、私は虚空に向かって低く唸る。
「バロ! 出てこなくていいけど、勝手なこともしないでって言ったでしょ!
ポテチの袋を爆破するのが、あんたの言う『おもてなし』なわけ!?」
すると、冷蔵庫の影からバロの冷ややかな骨伝導ボイスが響く。
『レイ様。私は最短ルートで二人の空腹を満たそうとしたに過ぎません。
次のフェーズとして、友人の好みに合わせた特殊栄養剤を茶に混入……』
「入れるな! 変な薬もサプリも一切禁止! 普通の麦茶でいいの!」
私は冷蔵庫から麦茶を取り出し、震える手でコップに注いだ。
このままでは、お泊まり会が終わる頃には友達との仲が全壊するか、
サキたちが超人的な肉体を持った戦士に改造されてしまう。
「……いい。次に余計なことしたら、二度と戦闘訓練なんてしないわよ!
いいから、あんたは電子の塵になって、隅っこで黙ってて!」
『……。承知しました。本人の意志を尊重し、静観モードに移行します。
ただし、室温がコンマ一度でも変動した際は、即座に再介入いたします』
「一度の変動も許さないのかよ……っ!」
私はお盆の上でガタガタ鳴るコップを必死に押さえ、居間へ戻る。
AIの「親切心」という名の爆弾を抱えたまま、
私は、戦場よりも過酷な女子高生トークの渦中へと飛び込んでいった。




