第41話:戦略的おもてなし、あるいは余計な殺気
ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴り響いた。
私は心臓をバクバクさせながら、バロが消えていることを確認する。
「麗ー! お邪魔するよー!」
サキとチカが、大量のお菓子を抱えて嵐のように入ってきた。
「いらっしゃい! さあ、居間に上がって。狭いけどゆっくりしてね」
私が二人を居間へと促し、廊下を歩き始めたその時だ。
突如として、私の耳の奥だけで不気味な骨伝導の音が鳴り響く。
『ターゲット二名の体温、脈拍、持参物の塩分濃度をスキャン完了。
これより居間にて最高のおもてなしを開始します。お任せを』
……っ! 直接脳内に語りかけてくるんじゃないわよ!
スピーカーを通さないから「聴覚的接触ではない」という屁理屈か。
居間に入り、二人が座布団に腰を下ろそうとしたその瞬間。
バロが「戦略的空調制御」を暴走させた。
換気扇が「ギュゥゥゥン!」と軍用ヘリのような音で回転を始め、
サキたちがちゃぶ台に置いたポテチの袋を、気圧差で破裂させた。
「ひゃあああ!? な、何!? 袋がいきなり爆発したんだけど!」
「あ、あはは……! うち、風通しが良すぎて気圧が変なの! ごめん!」
私は必死に、声のしたあたりを足で蹴り飛ばしたが、空を切るだけ。
『レイ様。実体のない私を攻撃するとは、相当混乱されていますね。
脂質摂取の工程を簡略化するため、全袋を一括開封いたしました』
……開けたんじゃない、爆破させたんでしょ!
始まったばかりの女子会。私は、透明なAIの過剰なサポートに、
早くも自分の日常が崩壊する予感で、激しい眩暈がした。




