第40話:機械の疑問、あるいは私の平穏
友達を迎える準備を始めた私を、バロが珍しく静かに観察していた。
いつもは一方的な指示ばかりなのに、不意に首を傾げる仕草をする。
『レイ様。一つ、質問を許可していただけますか』
「……何よ。今は忙しいんだけど。掃除しなきゃいけないし。
あと、いい加減に覚えてよ。私は『うらら』だからね」
私が手を止めずに言い返すと、バロは静かにホログラムを揺らした。
『なぜ、それほどまでにガソタムの存在を秘匿するのですか?
源造様の技術は、全人類に誇るべき至宝。隠す理由が不明です』
私は、手にしていた雑巾を置いて、青白い人型を真っ向から睨んだ。
このAIには、普通の女子高生が送る「日常」が理解できないのだ。
「……あのね、バロ。至宝だろうが何だろうが、関係ないの。
巨大ロボットが家にあるなんてバレたら、私は普通じゃいられない。
学校にもいられない。サキたちと笑い合うことも、できなくなる」
私が守りたいのは、おじいちゃんの遺産じゃなくて、私の居場所だ。
『……。レイ様は、ガソタムを「恥」と考えておられるのですか?』
「恥というか……。とにかく、私の人生には『余計』なの!
わかったら、土曜日は絶対に、絶対に私の邪魔をしないでよ」
バロは光を小さくまたたかせ、「……理解不能です」と呟いた。
論理と感情。おじいちゃんの遺産と、私の願い。
埋まらない溝を抱えたまま、ついに「お泊まり会」当日が訪れる。




