第37話:戦慄の習熟、あるいは仮想の敵
訓練用の仮想モニターに、最後の一機が爆散する光が映し出された。
私は無意識にレバーを戻し、荒い呼吸を整えながら自分の手を見る。
あれから、取り憑かれたように訓練を重ねてしまった。
今や画面の中に現れる敵ロボットを、踊るような操作で追い詰め、
危なげもなく撃墜できるところまで……できてしまったのだ。
「……何してるのよ、私。ただの女子高生のはずなのに」
破壊の快感にのめり込んだ自分に、激しい自己嫌悪が込み上げる。
そこでふと、冷静になった私はモニターの残骸を指差した。
「っていうかバロ。さっきから私が倒してるこの敵ロボットって何?
現実にはこんなのいないでしょ? 何なのよ、この不気味な造形」
『源造様のデータによれば、これらは「来るべき脅威」として、
半ば妄想に近い形で定義、およびシミュレートされております』
……妄想。
おじいちゃんの勝手な妄想の敵を、私は本気で壊し続けている。
そんな架空の敵を倒すために、これほど高度な技術を身につけ、
あまつさえ「楽しい」と思ってしまった自分が、ただただ情けない。
『お見事ですレイ様。この調子で次の「防衛シナリオ」へ移ります』
「……もういい。今日は終わり。バロ、システムを閉じて」
おじいちゃんの空想に、本気で応えている自分の姿があまりに滑稽で。
私はレバーから手を離し、暗転していくモニターを黙って見つめた。




