第32話:訓練の終わりと、逆走するレール
モニターに「TRAINING COMPLETE」の文字が踊る。
私はレバーから手を離し、強張っていた全身の力を抜いた。
『お疲れ様でした、レイ様。本日の基本動作訓練はすべて終了です。
明日はより高度な、不整地での歩行訓練を行っていただきます』
「……明日もやるの? もう、これだけでお腹いっぱいなんだけど。
ねえバロ、ここから居間に戻るにはどうすればいいの?」
私は、コックピットの中で周囲を見渡した。
「地下室への入り口は板で打ち付けちゃって通れないはずだけど、
まさか、あのタンスを内側から突き破って登れとか言わないわよね?」
『ご安心ください。座ったままで、元の居間までお送りいたします』
バロの言葉と同時に、ハッチが開き、シートが背後の壁へ連結された。
「……あ、これ、さっきの逆なのね。
ってことは……また、あの光を通って裸になるの?」
『左様です。光の中でスーツを分解し、全自動で制服へ着替えさせます。
なお、元に戻る際も映像としてバッチリ記録しますね』
「……全然安心できないわよ! 着替えるってことは脱ぐんでしょ!
撮るな、記録するな! 今すぐそのカメラを壊してよ!」
私の必死の抗議を無視して、椅子はレールを急上昇し始めた。
シュゥゥゥン! と風切り音と共に、シートが加速していく。
『帰還シークエンス開始。
記録の停止には、源造様の承認コードが必要となります』
「おじいちゃんはもういないでしょ! あーもう、二人とも最低!」
上昇する振動に揺られながら、私は再び訪れるであろう、
光の中でまっぱだかにされる恐怖に、固く目を閉じて身をすくめた。




