第31話:仮想の震動、あるいは過ぎ去った記憶
ズゥゥゥン……! と腹の底に響くような衝撃が全身を貫いた。
モニター越しに見る仮想の地面が、足の着地に合わせて激しく揺れる。
「……っ、本当に動いてないの!? この揺れ、本物じゃない!」
私はあまりにリアルな感覚に恐怖し、レバーを握る手に力を込めた。
もしシステムが故障して、本当に地下室を歩き出していたら。
家が崩落し、私が瓦礫の下敷きになる光景が頭をよぎる。
『ご安心ください、レイ様。機体各部の固定ボルトに変化はありません。
シートの反力装置と低周波振動により、平衡感覚を錯覚させている、
源造様こだわりの「超・体感シミュレーション」でございます』
……おじいちゃん、そんなところまでこだわらなくていいのに。
生きた心地がしない私をよそに、バロは淡々と次のステップを告げた。
『一歩目は合格です。では、そのまま三歩前進。
次に右へ九十度旋回し、指定のポイントまで移動してください』
「三歩……。右に、回る……」
言われた通りにレバーを操作する。
ガガッ、という重機のような音と共に、巨躯が向きを変える。
その時、私はデジャヴのような不思議な感覚に襲われた。
レバーを倒す時の重み。旋回する時の、わずかなラグ。
これ、知ってる。おじいちゃんの膝の上で遊んだ、あのゲームだ。
「……バロ。これ、昔おじいちゃんとやったゲームと同じ操作だよね?」
『正解です。源造様は「遊び」を通じて、
レイ様の脳にガソタムの操作ロジックを刻み込んでいたのです』
……やっぱり。
私は、自分の体が勝手に「次の動き」を覚えていることに戦慄した。




