第30話:安全なコックピットと、鉄の巨像
私は、座席を包み込むように輝く無数のコンソールに圧倒された。
バロがホログラムで、ガソタムの全身図をモニターに投影する。
『現在、レイ様がいるのはガソタムの胸部中央、主直結回路です。
ここから機体のすべての神経系にアクセスが可能となります』
「……だから私は、うらら。名前くらい、いい加減に覚えてよね」
私が溜め息混じりに抗議しても、バロは一切動じる様子がない。
私は不安を紛らわせるように、操縦レバーからパッと手を離した。
「……ねえ、私がうっかり触ったら、ガソタムが動いちゃうの?
いきなり家を突き破って、地上に出ちゃったりしない!?」
『ご安心ください。現在はシステムが訓練モードに固定されています。
レイ様がどれだけ操作しようと、実際の機体は一ミリも動きません。
あくまでモニター内の映像と、シートの振動のみの再現です』
バロの言葉に、私はようやく少しだけ肩の力を抜いた。
実際の機体が動かないなら、ただの超高性能なゲームと同じだ。
『では、基本訓練を開始します。まずはメインレバーをゆっくり押し、
ガソタムを前方へ「一歩」だけ歩かせてください』
「え、もうやるの!? ……。わ、わかったわよ。ゲーム、ゲーム」
私は自分に言い聞かせ、震える手で二本の大きなレバーを握った。
おそるおそる、本当に数ミリだけ、レバーを前へと倒してみる。
ズゥゥゥゥン……!
重厚な駆動音と共に、シートから全身に凄まじい振動が伝わった。
モニターの中で、巨大な鉄の足が地面を踏みしめる。
その感触は、どこか懐かしい『遊び』の記憶を呼び覚ますものだった。




