第29話:起動の光と、消し去りたい記録
ガッチャン! と激しい衝撃と共に、シートが何かに固定された。
同時に、真っ暗だった視界に無数の光のラインが走り、
全周囲ディスプレイが、地下の広大な空間を鮮やかに映し出す。
『レイ様。ガソタムへの搭乗成功、誠におめでとうございます』
モニターの端に、バロのホログラムがうやうやしく現れた。
パイロットスーツに身を包んだ私の姿を見て、満足そうに頷く。
『初めての搭乗シーンですので、映像でバッチリ記録しました。
確認いたしますか? 粒子化して裸になった瞬間とか』
「……っ、今すぐ消してよ! データの塵も残さず消去! 絶対!」
私は、操縦桿を握るはずの手で、思わず顔を覆った。
感動の初搭乗を台無しにする、このAIの無神経さ。
全身から怒りの熱が噴き出してくる。
『おや、貴重な初変身の記録ですが……。承知いたしました。
源造様の極秘アーカイブに移動し、ロックをかけておきます』
「消してって言ってるでしょ! 移動じゃなくて消去してよ!」
しかし、バロは「演算中」と表示して私の抗議をスルーした。
目の前には、巨大な指先まで連動して動く鋼鉄の身体。
そして私の手元には、おじいちゃんの変態的な技術の結晶。
「……もういいわよ。早く、その訓練とやらを終わらせて」
私は、絶望的な羞恥心に耐えながら、
ガソタムの鼓動が伝わってくる操縦レバーを、ギュッと握った。




