第27話:強制送還、あるいは秘密の入り口
玄関を開けた瞬間、バロが私の目の前に音もなく浮遊してきた。
ホログラムが展開され、一分一秒の誤差も許さない数字が躍る。
『レイ様。スケジュールが三分十八秒遅延しております。
直ちに戦闘訓練を開始しましょう。では、地下室へ』
「地下? ……ふふん、残念だけどそれは無理ね。
地下への階段は、私が板で塞いでタンスを置いちゃったから。
物理的に入れない以上、訓練なんて諦めてもらうわよ」
勝利を確信して笑う私に、バロは一切動じることなく返した。
『ご心配なく。予備のルートを起動いたします。
レイ様、そこの部屋の隅に立ってください』
バロが冷たく指したのは、何もないただの壁際。
不審に思いながらそこに立つと、家の底から不気味な重低音が響いた。
ガコォォォン! と畳が割れ、無機質な金属製のシートがせり上がる。
驚く暇もなく、ガチリと四点式ベルトが私の体を椅子に固定した。
同時に壁が左右へ高速スライドし、闇へと続くレールが姿を現す。
昔のアニメみたいな大層なギミックが、私の意志を無視して動く。
『緊急出撃シークエンス、開始。
……レイ様、舌を噛まないようお気をつけください』
シュゥゥゥン! と激しい風切り音と共に、シートが急加速した。
滑走するレールに火花を散らし、私は家の中を弾丸のように移動する。
「ぎゃああああ!? やめて、止めて! 速すぎる――っ!」
冷汗が風に飛ばされ、視界が激しく揺れる。
縦横無尽に張り巡らされた予備通路を、私は椅子ごと滑り落ちる。
おじいちゃんの無駄すぎる技術力が、私を闇の奥へと引きずり込む。
私はただ絶叫しながら、ガソタムの待つ地下深くへと撃ち出された。




