第24話:十万年の孤独、あるいは最強の埋没
私は、震える指先で畳の目をなぞった。
……ミサイルでも壊れない。重機も跳ね返す。
そんな家と、巨大ロボットを相続してしまった。
「ねえ、バロ。家がそんなに頑丈ってことは……。
この先百年とか経っても、見た目すら変わらないってこと?」
『百年? レイ様、その程度の時間では何も変わりません。
源造様の特殊合金が自然に消滅するまでには、
理論上、最低でも約十万年の歳月が必要でございます』
「じ、じゅ……十万年!?」
あまりの桁違いな数字に、冷汗が噴き出した。
私は、藁にもすがる思いでバロに食い下がった。
「……っ、だったら、逆の工程で土に戻す方法を考えてよ!」
『不可能です。原子を極限まで圧縮し結合させているため、
太陽表面並みの高温でなければ、分解はかないません。
現状、処分する方法は一つ。ガソタム自身の手で深い穴を掘り、
この家ごと地下深くへ埋まってしまうことです』
「……家を埋めるくらいなら、一日で掘れるんじゃないの?」
『いえ。単に家を沈めるだけでは、地表からすぐに見つかります。
何万年経っても発見されない「絶対深度」まで到達するには、
通常重機であれば、およそ一年はかかる工程でございます』
「……一年!? そんなの、もっと無理じゃない!」
『ご安心ください。ガソタムの出力を持ってすれば、
通常重機の約五倍の速度で掘り進めることが可能です。
およそ二ヶ月あれば、隠蔽可能な深度まで到達いたします』
二ヶ月。
通常の一年分を二ヶ月で。それはつまり、
凄まじい騒音と振動を二ヶ月間、出し続けるということだ。
冷汗が止まらない。
おじいちゃんの執念は、時間という概念すら無視していた。
地球の歴史に刻まれるレベルの、最強の不燃ゴミ。
私は止まらない冷汗を拭い、呆然と座り込んだ。




