第21話:乙女の祈りと、非情な計算
結婚の話が消えて少し冷静になった私は、バロを真っ直ぐ見た。
……そうだ。そもそも、この『爆弾』を抱え続ける必要はない。
「バロ。あなたの高度な知能なら、私の希望も叶えられるでしょ」
『お申し付けください、レイ様。私の全演算能力を投じます』
「……ガソタムを処分して。誰にも見つからないように解体して、
地下の穴を綺麗に埋め戻したいの。それで全部、終わりにする」
それが、私の本当の願いだ。
おじいちゃんの情熱は重すぎるし、隠蔽し続けるのは疲れ果てた。
全部をなかったことにして、普通の女子高生に戻りたい。
しかし、バロのホログラムは不気味な赤色に染まった。
『却下します。その希望は、物理的および戦略的に不可能です』
「……なんでよ。あんた、ハッキングだってできるんでしょ?」
『問題はそこではありません。ガソタムの装甲は特殊超合金。
現在の地球上に存在する、いかなる重機でも切断不能です。
解体にはガソタム自身の出力が必要ですが、それは起動を意味し、
そのエネルギー波形は瞬時に軍事衛星に探知されます』
……つまり、壊そうとした瞬間に、世界中にバレるってこと?
『さらに、埋め戻しに必要な土砂は約一万立米。
大型ダンプ数百台がこの家に出入りすれば、隠蔽は不可能です』
冷汗が、さっきよりも冷たく頬を伝う。
捨てることすら許されない。物理の法則が私に絶望を説く。
『結論。レイ様が平穏を望むならば、現時点での最善策は、
「そのまま隠し持ち、朽ちるのを待つ」ことのみでございます』
……百年単位の話じゃない、それ。
私は、おじいちゃんが遺した「最強の不燃ゴミ」に戦慄した。




