第99話:鋼の拘束室、あるいは捕虜収容
大破して動かなくなったプロトタイプ。
私は震える手で操縦桿を握り、バロに訴えた。
「……バロ。勝ったのはいいけど、
私、やっぱり人殺しはしたくないよ。
尾田さんをどうにか助けられない?」
『フフフ、ご安心くださいレイ様。
おじい様はこの事態すら予見し、左腕に
「捕虜拘束用ツール」を完備しておりますぞ』
「捕虜……拘束?」
『左様。機体内部に、学校の掃除用具入れ
程度のスペースを確保してございます。
一人を閉じ込めておくには十分ですな』
その時、プロトタイプのハッチが開き、
ボロボロになった尾田さんが這い出してきた。
『レイ様。今ですな。収容シーケンス開始!』
バロの合図で、ゼットの左腕から
繊細かつ強靭なマニュピレーターが伸びた。
それは、呆然とする尾田さんの襟首を
子猫のようにひょいとつまみ上げる。
『……な、何をする! 離せ!
俺をこんな……物置のような場所に!』
じたばた暴れるピンクスーツの尾田さん。
けれど、ゼットのロボットアームは
一切の容赦なく、機体のサイドにある
小さなハッチへと彼を押し込んだ。
ガコンッ、と小気味よい密閉音。
「……。本当に入っちゃった。
掃除用具入れみたいなところに……」
こうして、世界を揺るがした大泥棒は、
マッハ10の最新鋭機の中にある
「部室の隅」のような狭い空間に収容された。




