第98話:絶望の体当たり、あるいは鋼の崩壊
弾丸も、刃も通じない。
全ての武装を無力化された尾田さんは、
獣のような咆哮を上げて操縦桿を突き出した。
『ええい、ならば……!
刺し違えてでも、その鼻柱を折ってやる!』
プロトタイプが背中のブースターを全開にする。
地を這うような加速で、
灰色の巨体が弾丸となってゼットへ肉薄した。
「……っ、尾田さん、危ない!」
私の叫びも虚しく、
プロトタイプは全力の体当たりを
ゼットの正面装甲へ叩きつけた。
――ズゥゥゥゥンッ!!
大地を揺らす凄まじい衝撃音。
だが、揺らいだのは私の方ではなかった。
「……。うそ、でしょ……」
ゼットガソタムには微動だにせず、
微かな擦り傷一つ付いていない。
対照的に、ぶつかった側のプロトタイプは、
自らの突進エネルギーに耐えきれず、
正面装甲が飴細工のようにひしゃげ、
全身のフレームが悲鳴を上げて砕け始めた。
『……ぐ、あ……。あ、あり得ん……。
ぶつかった俺の方が……壊れるだと……!?』
火花を散らし、膝をつくプロトタイプ。
『レイ様。豆腐が岩にぶつかったようなもの。
おじい様の計算通り……
あの子の命運は、ここで尽きましたな』
バロの冷徹な宣告と共に、
プロトタイプは白煙を上げながら、
ゆっくりと砂漠の砂へと沈んでいった。




