第97話:無力な鉄拳、あるいは鋼の静寂
カキィィンッ! カギィィンッ!
砂漠の空に、激しい金属音が何度も響く。
腕を失い、なりふり構わずビームサーベルを
叩きつけ続ける尾田さんの姿は、
もはや執念という名の狂気に憑かれていた。
「……。もう、やめましょうよ、尾田さん」
私は操作パネル越しに、悲痛な声を上げた。
一筋の傷も付かないゼットの装甲を前に、
必死に抗い続けるプロトタイプの姿が、
今の私には、ひどく惨めで、かわいそうに見えた。
『黙れ……! 認めん、認めんぞぉっ!
俺が……俺のガソタムが、こんな
ガキの乗る新型に屈するなど……!』
尾田さんは一度距離を取ると、
プロトタイプの頭部バルカンを全弾射出した。
凄まじい火線がゼットを包み込む。
バラバラバラッ!
……けれど、火薬の弾丸はゼットの装甲に
触れた瞬間に虚しく弾け、
足元の砂を無意味に耕すだけだった。
「……。私、まだ何もやってないんだけど」
私が思わず呟くと、バロが
レンズをパチリと明滅させて応じる。
『レイ様。戦う以前の問題にございます。
赤子の拳で鋼鉄の扉を叩いているようなもの。
もはや、相手にすらなっておりませんな』
全弾を撃ち尽くし、カチカチと
空虚な作動音だけを鳴らすプロトタイプ。
かつての「本物」は、ただそこに
立ち尽くすことしかできなくなっていた。




