第96話:断ち切れぬ刃、あるいは鋼の隔絶
右腕を失い、バランスを崩しながらも、
尾田さんの瞳からはまだ闘志が消えていなかった。
『おのれ……! ならばこれならどうだ!』
プロトタイプの太ももの装甲が跳ね上がり、
円筒形のデバイスが空中へと射出される。
残った左手でそれを掴むと同時に、
眩い高エネルギーの刃が伸びた。
『出力最大! 焼き切れぇぇっ!!』
尾田さんは狂ったように叫び、
全力の力でビームサーベルを
ゼットの肩口めがけて振り下ろした。
ジジジッ、と激しい火花が散り、
超高温のプラズマが装甲を焼き焦がす――
はずだった。
「……。熱くも、痛くもないよ、尾田さん」
ゼットのモニターには、警告すら出ていない。
おじいちゃんの作った究極の装甲は、
ビームの刃を受け止め、あろうことか
その熱エネルギーを表面で弾き返していた。
『バカな……! 何故だ!
ガソタムのビームを耐えられる装甲など、
この世に存在するはずがない!』
力任せに押し込もうとする尾田さんだが、
サーベルの刃はゼットの肩で空しく滑り、
一筋の傷すら付けることができない。
『レイ様。あの子の出力では、
このゼットの表面温度を1度上げるのが
精一杯といったところですな』
バロの冷ややかな分析が、
尾田さんの絶望に追い打ちをかける。
最強の矛と、それを遥かに凌駕する盾。
その残酷なまでの性能差に、
戦場の空気は完全に凍りついていた。




