第94話:乱気流の着地、あるいは鋼の対峙
「ゼット、変形開始!」
私の叫びと共に、マッハの槍が
空中でその姿を激しく組み替えていく。
翼が畳まれ、手足が弾け出す。
だが、飛行形態から人型への急激な変化は、
空気の壁を乱し、機体のバランスを激しく奪った。
「……っ、バロ! 姿勢が保てない!」
『レイ様! 推力偏向ノズルを全開に!
脳波同調で、無理やりねじ伏せるのですな!』
天地がひっくり返るような激しい震動。
私は歯を食いしばり、
自分の一部となった「足」を
見えない地面に向けて必死に蹴り出した。
――ドォオオンッ!!
凄まじい衝撃。砂塵が天まで舞い上がる。
私は激しい揺れに耐え、
砂煙の中から、ゆっくりと顔を上げた。
視界が開けたその先にいたのは、
驚愕に目を見開いたまま、
灰色の右腕をこちらに向けたプロトタイプ。
『……バカな。空中で、あの速度から
人型に変わって着地しただと……!?』
モニター越しに、尾田さんの
震える声が聞こえてくる。
そして私もまた、目の前にそびえ立つ
「本物」の禍々しさに、息を呑んだ。
「……本当に、来ちゃった。
おじいちゃんの、もう一つの完成体の前に」
砂漠の風が、鋼鉄の巨人の間を吹き抜ける。
想定外の再会を果たした二つのガソタムは、
沈黙の中で、静かにお互いの存在を睨みつけた。




