第93話:不殺の誓い、あるいはZの変容
迫りくるプロトタイプの砲撃。
私は操縦桿を強く握りしめ、
バロに切実な思いを訴えかけた。
「……バロ、どうしよう。
あの子は壊してもいいけど、
私、人殺しなんてしたくないよ!」
機体は所詮ただの機械だ。
けれど、中に乗っているのは生身の人間。
女子高生の私に、その命を背負う覚悟はない。
『レイ様。お任せください。
おじい様がこの機体に託したのは、
圧倒的な力による「救済」にございます』
バロの落ち着いた声が、頭の中に響く。
『これより指示する通りの操作を。
破壊ではなく、希望のための力……
その真の姿を解放いたしましょう!』
バロのガイドに従い、私はコンソールの
中央にあるレバーを力強く引き上げた。
――トランスフォーム・シーケンス、開始。
ガガガッ、と重厚な駆動音が空に鳴り響く。
鋭利な翼が複雑に折れ畳まれ、
機首が割れて、中から「顔」がせり上がる。
マッハ10の戦闘機が、
空中で巨大な鋼鉄の巨人へと姿を変えていく。
それはプロトタイプよりも洗練され、
どこか気高さを感じさせる騎士のような威容。
私は、自分の一部となったその巨人の
力強い鼓動を肌で感じながら、
戦場を見下ろす灰色の影へと真っ向から対峙した。




