第91話:再会の空、あるいは桃色の亡霊
地表で砂煙を上げる「本物」を見下ろし、
私はゼットガソタムを大きく旋回させた。
上空を舞う未知の鋭利な機体に、
地上のプロトタイプが動きを止めて顔を上げる。
「バロ。あの子に……尾田さんに通信を繋いで」
『お任せを。全周波、強制割り込み開始……
繋がりましたぞ』
メインモニターの正面に、
ノイズ混じりの通信ウィンドウが浮かび上がる。
そこに映っていたのは、
あのピンクのパイロットスーツを着たまま、
驚愕に目を見開く尾田さんだった。
『なっ……古谷麗!? バカな、何故お前が!
その見たこともない機体は一体どこから……!』
尾田さんは、私が自衛隊でもない機体で
中東の空に現れたことに、激しく狼狽している。
「尾田さん、もうやめて! どうしてこんな
ところまで来て、戦いなんてしてるの?
世界中があなたを止めるために動いてるのよ!」
私は、パネルに挟んだクリスマス写真を
指先でなぞりながら、画面の中の彼に
必死に言葉を投げかけた。
「そのガソタムは、おじいちゃんが
誰かを傷つけるために作ったんじゃない!
お願い、降りて。今ならまだ……!」
『……黙れ! 誰が降りるものか!
この力、この万能感……これこそが、
私が求めていた本物の戦場なんだ!』
尾田さんは狂ったように叫ぶと、
灰色の巨体の腕を、ゆっくりと
空を舞う私へと向けた。




