第84話:三日後の戦火、あるいは撃破の刻限
バロと今後の相談をしていたその時、
再び野田さんから通信が入った。
受話器越しの声は、一段と切迫している。
『古谷さん、決まったぞ。
三日後、中東で大規模な衝突が予想される。
必ずあのプロトタイプが現れるはずだ。
政府はすでに、ゼットを運ぶための
超大型輸送機の極秘ルートを確保した』
野田さんの言葉を遮るように、
居間のバロがスピーカーを通じて会話に割り込んだ。
『野田様。輸送機の必要はございません。
ゼットはマッハ10で飛行可能です。
中東の戦域まで、およそ1時間で到着できますぞ』
『……。真砂からスペックは聞いているが、
燃料の問題があるだろう。片道で空になるぞ』
野田さんが常識的な反論を口にするが、
バロは鼻で笑うような電子音を鳴らした。
『問題ありません。おじい様の超効率エンジンを
侮らないでいただきたい。
1時間の飛行で使用される燃料は、約5%ほど。
そのまま現地で一戦交えて帰還も可能ですな』
『……。5%だと? 往復してもお釣りがくるのか』
電話の向こうで野田さんが絶句するのが分かった。
もはやそれは、現代の兵器体系を
根底から覆す「化け物」のスペックだった。
『輸送機を待つ時間は無駄にございます。
三日後、レイ様が朝食を済ませてから
家を出れば、十分に間に合いますぞ』
朝食を食べてから、中東の戦場へ。
あまりに現実味のないスケジュールに、
私は窓の外の静かな空を見つめるしかなかった。




