第80話:夢の工房、あるいは妥協の成立
「……。ではバロ殿、こういうのはいかがです?
基地の一画に、専用のスペースをお貸しします。
そこにお好きな機材や設備……」
真砂さんは疲れを見せつつも、
熟練の交渉人のような鋭い目で提案した。
「バロ殿の『お好きな物』を自由に作れる、
専用の工房を作るというのは。
それなら、ゼットを移送しても宜しいですか?」
その言葉を聞いた瞬間、
真っ赤に明滅していたバロのホログラムが、
パッと明るい緑色に変わった。
『ほう……。私の好きなように、
何を設営しても良いとおっしゃるのですかな?
超高画質の記録システムも?』
「ええ。防衛予算の範囲内であれば」
『……よろしい、承諾いたしましょう!
話が分かるではないですか、真砂様!』
さっきまでの頑なな態度はどこへやら。
バロはあっさりと、そして実に嬉々として
移送を承諾してしまった。
「……。ちょっと、いいの!?
あんなにあれこれ言ってたのに、
そんなエサであっさり許可しちゃうわけ?」
私は、感動的な覚悟から買収工作まで
使い分けた真砂さんの有能さと、
自分専用の部屋に釣られた変態AIを
ただただ、呆れた顔で見守るしかなかった。
こうして、史上空前の「変態用工房」建設と
引き換えに、ゼットガソタムの
基地への移送が決定してしまった。




