第75話:覚醒の翼、あるいはZの鼓動
目の前に鎮座する「J12-GSTM」。
「ゼットガソタム」というその機体からは、
プロトタイプにはなかった、
静かな、けれど圧倒的な圧力が伝わってくる。
「……ねえ、バロ。これ、どうやって乗るの?
ハッチがどこにあるかも分からないんだけど」
私が翼の付け根あたりを指差すと、
バロは誇らしげにホログラムの胸を張った。
『おじい様が、レイ様のためだけに設計した
特別なコクピットへご案内いたします。
真砂様は、その位置で待機を』
バロが合図を送ると、鋭利な機体の
中央部分が音もなく下に開き、
純白のシートが滑り降りてきた。
「……。本当、おじいちゃんの趣味全開ね」
呆れながらも、私は吸い寄せられるように
そのシートへと腰を下ろした。
その瞬間、シートが吸い込まれるように
機体の中へと戻り、私の視界は
360度全方位のモニターへと切り替わる。
『……脳波同調準備。
レイ様、この機体は貴女の思考そのものを
動力へと変換いたします。
まだ起動はさせませんが、感触はいかがかな?』
バロの声が、頭の中に直接響いてくる。
「……。何これ。
まだ動かしてないのに、まるで自分の
手足が増えたみたいに……ゾクゾクする」
プロトタイプとは比較にならない密着感。
私は暗いコクピットの中で、
静かに息を潜めている「ゼット」の鼓動を
肌で感じ取っていた。




