第73話:野田の密命、あるいは真機(しんき)への扉
野田さんとの電話を切ってから一時間。
外で車の停まる音がして、インターホンが鳴った。
玄関を開けると、そこには野田さんの側近である
真砂さんが、険しい表情で立っていた。
「麗さん、夜分に失礼します。
野田の命令で参りました」
真砂さんは周囲を警戒するように見回すと、
声を潜めて本題を切り出した。
「検討会議は紛糾しています。……表向き、
野田は麗さんに待機を命じましたが、彼は
このままでは間に合わないと確信している」
彼女は一歩踏み込み、真っ直ぐに私を見据えた。
「野田の密命です。古谷指導官。
……バロ殿から聞いた『実用機』を、
私に見せていただけますか?」
やはり、野田さんもおじいちゃんの言葉を
無視することはできなかったのだ。
「……分かりました。でも、私もまだ
どこにあるのか、どんな姿なのか知らないんです」
その時、居間の隅に置いてあった球体のバロが
パカッ、と上下二つに割れた。
そこから、いつもの執事姿のホログラムが
優雅に立ち上がり、落ち着いた声で告げる。
『フフフ。それについては、私がご案内しましょう。
野田様も、なかなか話が分かる御仁だ』
おじいちゃんの遺した「本物の真打」。
私は真砂さんと共に、自分たちの家の下に隠された
未知の領域へと、足を踏み出す決意を固めた。




