第18話:畳の下の、喋る不法侵入者
家に帰り着いた私は、居間のちゃぶ台に突っ伏していた。
安室さんの言葉が、頭の中で何度も繰り返される。
でも、答えは変わらない。ガソタムを見られるわけにはいかない。
「……じいちゃん。私、これからどうすればいいのよ」
答えの出ない問いを、誰もいない空間に投げかけた、その時。
ピポ、ピポポポッ! と電子的な音が、静かな部屋に響いた。
不思議に思って顔を上げると、畳の一部が不自然に動いた。
正方形に切り抜かれた畳が沈み、そこから何かが浮上してくる。
「きゃああああっ!? な、何、泥棒!? ネズミ!?」
私は叫び声を上げ、座布団を盾にして部屋の隅へ飛び退いた。
現れたのは、バレーボールほどの大きさの、国防色の球体。
それが中央からパカリと割れ、青白い光が空中に放たれる。
『お帰りなさい、レイ様。脈拍が上昇しています。落ち着いてください』
「……っ、その名前で呼ぶな! 私は『うらら』って名乗ってるの!」
『戸籍謄本上の呼称は「古谷麗」と記録されています。
私は、ガソタム戦略サポートシステム、通称「バロ」。
源造様の遺志により、本日よりあなたをサポート致します』
「……せんりゃく? サ、サポートシステム……?」
何その、物騒極まりない名前。
自分の本名を平然と呼ぶ不躾な光の塊に、私は戦慄した。
恐怖と困惑、そして忌々しい名で呼ばれた怒りで、
冷汗がまた滝のように流れ落ちる。
『ガソタムの機体コンディション、および周辺の警戒状況。
すべて私の管理下にあります。ご安心ください、レイ様』
「だから『レイ』って呼ぶなって言ってるでしょ……!」
私は座布団を抱えたまま、必死に頭を回転させる。
地下のガソタムは隠した。あとはこの『バロ』とかいうのを、
どうにかして黙らせて、どこかに押し込めばいいはずだ。
おじいちゃんの残したオタク趣味に、これ以上構っていられない。
私は、目の前でくるくると回る光の球体を、油断なく睨みつけた。




