第71話:鋼の漂流者、あるいは海の向こうの戦火
ガソタムが奪われてから、数日が経過した。
自衛隊による必死の捜索も空しく、
国内には影も形も見当たらない。
私は今日も落ち着かない日常を送り、
夕食後の居間で、何気なくテレビをつけた。
画面に映し出されたのは、海外の緊迫した
紛争地域から届いた、最新のニュース映像。
『……続いてのニュースです。中東の紛争地で
「巨大な人型の何か」が突如として現れ、
敵対勢力を一人で蹴散らしたとの情報が……』
「……。えっ?」
ノイズまじりの粗い携帯カメラの映像。
砂煙が舞う戦地の中、そこには見覚えのある
無骨な灰色のシルエットが立っていた。
それは凄まじい機動力で戦場を駆け、
砲撃を物ともせず、一撃で戦車を粉砕する。
画面の隅に映り込んだその姿に、
私は手に持っていたコップを落としそうになった。
「バロ……これ、あの子だよね?」
『……左様でございますな。あの動き、
間違いなく私がこれまで共に過ごした、
私の「肉体」に間違いございません』
バロの声が、かつてないほど低く沈む。
国内で見つからないはずだ。
尾田さんはガソタムを駆って、
密かに海を越え、本物の戦場へと
降り立っていたのだ。
平和な私の居間に、テレビ越しの硝煙の匂いが
流れ込んできたような錯覚に陥り、
私はただ、画面の中の巨人を凝視し続けた。




