第70話:虚構の日常、あるいは消えた巨人
野田さんから、その後の指示が入った。
「とりあえずいつも通りの生活をして構わない。
だが、連絡はいつでも取れるようにしておいてほしい」
大人の事情で足踏みしている間に、
ガソタム奪還作戦は、奇妙な停滞を迎えていた。
いつも通り、とのことなので、
私は翌朝から学校へと登校することにした。
カバンの中には、シールを貼ったスマホ。
……そして、いつ呼び出されるか分からない緊張。
「おはよう、麗! 昨日どうしたの?」
サキたちの無邪気な声に「ちょっと用事で」
と適当な嘘を吐く。心がチクリと痛んだ。
その間も、国を挙げたガソタムの捜索は
難航を極めているようだった。
「ねえ、バロ。あんな巨大なロボット、
隠そうとしてもすぐ見つかると思うんだけど」
休み時間、屋上でこっそりスマホに呟くと、
バロは画面の中で冷静に分析を返した。
『確かに18メートルという巨体は目立ちますが、
山間部や廃工場に身を隠されれば、
上空からの捜索でも特定は容易ではございません』
ましてや、尾田曹長は基地の運用を知り尽くした男。
捜索網の「穴」を熟知しているのかもしれない。
なかなか手がかりが見つからないまま、
時間だけが虚しく過ぎていく。
午後の授業。私はノートの端に、
足元の地下で眠っているという
「まだ見ぬガソタム」を想像して描いてみる。
どんな形をしているんだろう。
プロトタイプより強そうなのかな。
私は何度も窓の外の空を見上げては、
見えない巨人の影を探していた。




