第68話:執事の詰め、あるいは司法の壁
おじいちゃんの姿をしたバロは、
さらに追い打ちをかけるようにニヤリと笑った。
『ところで野田くん、さっき君は
レイを戦闘に参加させないと言ったな?』
その言葉に、野田さんは眉をひそめて黙り込む。
バロはホログラムの指を一本立てて続けた。
『実用機があるということは、
一人の女子高生が軍事機密級の兵器を、
無許可で自宅に所持しているということじゃ』
おじいちゃんの声は、どこか楽しげでさえある。
『レイが出撃して尾田を止めたところで、
彼女はまた「兵器の不法所持」と「戦闘行為」で
犯罪者扱いされることになるが……どうするかね?』
司令室の空気が、重く、鋭く凍りつく。
野田さんは拳を強く握りしめ、
震える声でバロ……おじいちゃんを睨みつけた。
「……。君は、この状況で司法の議論を
持ち出すというのか! 今この瞬間も、
都心の安全は脅かされているんだぞ!」
『だからこそ聞いとる。平和を守るためなら、
子供を犯罪者にしても構わんと言うのか?
君ら大人の「正義」とやらを見せてほしいもんじゃ』
私を守ろうとする野田さんの良心と、
国を救わなければならない責任。
おじいちゃんは、その最も痛い部分を
正確に、執拗に抉り取ろうとしていた。




