第66話:大人の理屈、あるいは唯一の鍵
「捜索は自衛隊の全力を挙げている。
……だが古谷さん。君は民間人の学生だ。
これ以上の危険な戦闘をさせるわけにはいかん」
野田さんは苦渋の表情ながらも、
一人の大人として、断固とした口調で私を制した。
彼はそのまま、私のスマホ……バロへ向き直る。
「バロ。麗さんを危険にさらさず、
ガソタムを止める方法は他にないのか?」
その問いに、バロは一拍の間を置いて、
どこか試すような冷徹な声を返した。
『……方法があるかないかと言われれば、
「ある」にはございます。ですが、
その方法はレイ様にしか行えません』
バロのホログラムが、静かに明滅する。
『あの子を止められるのは、
世界でただ一人、レイ様だけでございます。
……他の誰にも、代わりは務まりませぬ』
野田さんが何か言おうとするのを遮り、
バロはさらに突き放すように言葉を重ねた。
『たった今、レイ様を出撃させないと
仰ったのであれば、この方法は使えません。
……あの子の暴走を、ただ眺めているのが
野田様の望みであるなら、それで結構』
「っ……。バロ、言い過ぎだよ!」
私が慌てて止めに入るほど、バロの言葉は
野田さんの「守るべき正義」を鋭く抉った。
守るための拒絶か、救うための許可か。
沈黙に包まれた司令室で、野田さんは
自身の掲げる責任と、過酷な現実の間で
激しく葛藤していた。




