第60話:奪われた巨人、あるいは春の崩壊
春休みが終わり、今日から新学期。
私はスマホへの不信感を抱えつつ、
桜の舞う通学路を足早に歩いていた。
あの盗撮事件以来、私のスマホのカメラには
これでもかと分厚いシールが貼ってある。
バロはスマホの改造に、バロがアクセスできるよう
にもしていた。
持ち主に内緒で勝手に改造するなんて・・・
『レイ様。それではあまりに使いにくいのでは?』
「うるさい。あんたを信用してない証拠よ」
ポケットの中で文句を言うバロを無視して、
あと少しで学校の正門というところで、
カバンの中のスマホが激しく振動した。
画面には、野田さんの名前。
私は迷わず、通話ボタンを押した。
「はい、古谷です。今、登校中なんですけど」
『古谷さんか。至急、基地へ来てほしい。
……ガソタムが盗まれた』
野田さんの、地を這うような低い声。
心臓がドクンと跳ね、私はその場に立ち尽くした。
「えっ!? 盗まれたって……Mk-IIですか?」
『違う。……君が乗っていた「初代」の方だ』
「本物が!? ……嘘でしょ、あんな大きなもの!」
『ああ。学業優先の約束を破るようで
非常に申し訳ないが、今は一刻を争う事態なんだ。
君のすぐ後ろに車を回した、すぐに乗ってくれ』
振り返ると、いつもの黒塗りの車が
アスファルトにタイヤの痕を刻んで急停車した。
目の前には、もう学校の門が見えているのに。
私は吸い込まれるように後部座席に飛び込み、
新学期の喧騒から、再び戦場へと連れ戻された。
うらら
「皆さま、いつも『起動させないしガソタム
〜おじいちゃんが地下にガンダムみたいな遺産を
残していった件〜』をお読みいただき、本当に
ありがとうございます! 本編でガソタムの存在に
怯え、周囲の壮大すぎる勘違いに毎日胃を痛めて
おります、主人公の古谷うららです!」
(シクシクと泣き崩れる
スタジオのうららの音)
うらら
「……ううっ、読者の皆さま。
前回のあとがきで、私は一生モノの精神的ショック
を受けました。まさか親友2人との友情が、全部
作者の書いた台本だったなんて……!
下の名前しか与えられてないモブだったなんて!
もう誰も信じられない! 女子高生の世界は
冷徹すぎるわ……!!」
うらら
「もうこうなったら、裏表のない頼れる大人の
人に話を聞いてもらうしかないわ! 国家の重責を
担う、常識人な大人の包容力に癒やされたい!
というわけで、今回は内閣府特命担当官の
野田輝さんに来ていただいています! どうぞ!」
野田
「内閣府特命担当官の野田輝だ。古谷さん、
最近のあとがきで君が大変な事態になっていると
聞いてな。我が国の最重要案件を
抱える君のメンタルケアも、私の重大な任務だ。
今日は大人の私に、何でも安心して頼ってほしい」
うらら
「野田さん……! ありがとうございます……!
うう、やっぱり持つべきものは国家権力側の頼れる
大人だよ。おじいちゃんの超科学とかに囲まれてた
から、野田さんの言葉が優しすぎて染み渡るわ……」
野田
「(その鋭い視線を、部屋の隅へと向ける)
……いや、安心するのはまだ早いぞ、古谷さん。
状況を確認した。あそこの部屋の隅の暗がりで、
四つん這いになりながら、未だかつてないほど
鼻息を荒くして古谷さんを凝視している成人男性がいる。
……あれは一体、何という生命体だ?」
うらら
「(ハッと部屋の隅を見て顔面蒼白になる)あ、
アカン!!! 忘れた!!! あれ、この作品の
作者さん!!」
野田
「何だと……!? あれがガソタム(GSTM)を
描き出した創造主だというのか!? だが、様子が
おかしい。現役女子高生の君の横に、スーツ姿の
大人の男(私)が並んだ瞬間から、嫉妬と憤怒で
顔が般若のようになっているぞ!?」
うらら
「そうなのよ野田さん! 作者さん、いつもは
人見知りで照れて物陰に隠れたりしてるくせに、
『大人の男が女子高生の横に並んだ』せいで、
寝取られ(NTR)の波動を勝手に検知して、
限界突破して理性が完全消滅してるのよアレ!!」
野田
「手元に落ちている作者の言い訳メモを回収した。
読み上げるぞ。……『うおおお! 私のうららちゃんに
大人の男が近づいて優しくしてる! 許せん!
ギクシャクした年の差カプの演出なんて頼んでないぞ!
消去だ! 国家権力ごと野田をプロットから消去して
やるゥ!!』……。何という身勝手な私怨だ!」
うらら
「プロット(作者の私怨)の力で消されるのは
本当に洒落にならないからーーーっ!!! 誰か、今すぐ
ここに警察を呼んでください!!!」
野田
「(おもむろにスーツの袖をまくり始める)……。
いいや、その必要はない。ここは私が何とかして
みせよう。あの男も、2、3発殴ればまともになる
はずだ」
うらら
「ちょっと野田さん、やめてーーーっ!!!
国家公務員が一般人に手を上げたら、さすがに暴力は
コンプライアンス的に完全アウトだからーーーっ!!!」
野田
「古谷さん、それが甘ったれなんだ!
殴られもせずに一人前になった奴が、一体どこに
いるものか!!」
うらら
「おじいちゃんのガソタム(ガンダム)趣味が
特命担当官にまで感染して名言が飛び出してる
じゃないですかーーーーっ!!! 殴ったって作者の
変態性が一人前になるだけで、まともには戻らない
から落ち着いて野田さん!!!」
うらら
「あ、作者さんが野田さんのガチの拳のプレッシャー
にガタガタ震えてシュンとして、部屋の隅の暗がりへ
すごすごとバックしていったよ……。命拾いしたわね
作者さん……」
うらら
「ふぅ……、はぁ……。もう本当に色んな意味で
命の危険を感じたわ。……さて! このあとがき
コーナー、ゲストに質問をするのが恒例になってる
から、野田さんにも何か質問を……。……あれ?」
野田
「どうした、古谷さん? 何でも聞いてくれて
構わないぞ」
うらら
「(冷や汗を流しながら)……困ったわ、質問する
ことが何も思いつかない。野田さん、この作品の中
で数少ない『普通にまともな人』だから、これまでの
メンバーみたいにツッコミどころが全然ないわ……」
野田
「ははは、そんなに身構えなくていい。
プライベートな質問でも、答えられる範囲で
何でも答えよう」
うらら
「う、うん! じゃあとりあえず……野田さんの
『趣味』って何ですか?」
野田
「私の趣味か? そうだな、休日は自宅の書斎で
『読書』をしていることが多いな。主に歴史小説や、
経済に関する新書などを好んで読んでいるぞ」
うらら
「(心の中で大パニックになる)ヤバい!!!
本当に今回のあとがき、普通につまらないんじゃ
ないこれ!!! 官僚の趣味が読書って、
清々しいほど模範的すぎて笑いの要素が1ミリも
ないんですけど!? あとがきとしての撮れ高が
完全に大ピンチだわ!!」
うらら
「え、えーっと! じゃあ、その、休日に
『友達と一緒に遊びに行ったりとかはしないんですか?』」
野田
「いや、お恥ずかしい話だが、この歳になると
仕事ばかりでな。私自身、友人と呼べるような親しい
人間はほんの少数しかいなくてな。ただ、そんな
少ない友人たちと、『たまに時間を合わせて
飲みに行ったりはしているぞ』」
うらら
「(あ、良かった! ちょっと人間味があるエピ
ソードが出てきた!)ほうほう、そうなんですね!
じゃあ、その『友人からはなんて呼ばれてるんですか?』
やっぱり野田さんとか、ひかるさん、とか?」
野田
「いや、彼らからは学生時代の頃からずっと、
『ブライト』と呼ばれているな」
うらら
「……へ? ブライト?」
野田
「ああ。私の名前は野田輝だろう?
この『輝』という文字を英語に翻訳すると、
『ブライト(Bright)』となるからな。だから友人達
の間ではそう呼ばれている。さらに今の私の仕事が
官僚なので、彼らからはよく、
『ブライト官僚』と……」
うらら
「ストーーーーーップ!!!!!」
うらら
「言うな!!! それ以上その口で不吉なダジャ
レを言うんじゃありません野田さん!!!
ブライト官僚って何!? それ完全にあの有名アニメの
『ブライト艦長』のパロディじゃないですか!!
前半であんなに熱く『殴られもせずに〜』とか力説
してたの、大人の包容力じゃなくて、ただの友人間
のあだ名に引っ張られただけの伏線だったのね!?」
野田
「す、すまない。彼らと飲むと、いつもこのネタで
弄られるのがお決まりになっていてな。つい口に
出してしまったが、やはりおかしかっただろうか……」
うらら
「おかしさのレベルで言えば、おじいちゃんの
ガソタム(GSTM)と完全に同類です!! 頼れる大人
をお呼びしたと思ったら、まさかこんな隠された
ガンダムパロディの闇を直撃するなんて思わなかった
わよ! この作品の登場人物、やっぱりまともな大人は
1人も存在しないのね!! 撮れ高の危機どころか、
パロディの過剰摂取で別の意味での大ピンチよ!!」
野田
「(うららの嘆きを聞いて急に表情を険しくし、
スタジオの天井を見上げながら)……。
これでは古谷さんが輝かないだろうが!!
おい、スタッフ! 光源薄いぞ、
何をやっている! もっと明るく照らせ!!」
うらら
「照明スタッフに理不尽な八つ当たりを
するんじゃないわよ!! 『左舷、弾幕薄いぞ』の
パロディを『光源薄いぞ』って勝手にスタジオの
照明に変換して怒鳴り散らさないで!!」
野田
「さらに言うなら、仕事で外国に行った時には、
向こうの友人から『ブライト・ノダ(Bright-Noda)』
だな、とからかわれてな……」
うらら
「もういいです。」
うらら
「完全にブライト・ノア(Bright Noa)に
寄せてきてるじゃないですか。
もうお腹いっぱいです。
真面目な顔して隙あらば自分の名前でガンダム
パロディを滑り込ませようとするのやめてください。
これ以上付き合ってたら私の喉が本当に消滅します」
うらら
「読者の皆さま、この大真面目にガンダムパロディを
連発してスタジオを混乱に陥れた特命担当官
(とツッコミに疲れた私)に、ぜひページ下部にある
【ブックマーク登録】や、評価の
【⭐星を5つ】ポチッと押して、
応援をお願いします!」
野田
「皆さまのその応援(星マーク)が、作者の
テンションを上げて、私のプライベートでの弄られ
あだ名や台詞をさらに豪華にする燃料になるそうだ。
私の国家予算のためにも、何卒よろしく
頼むぞ」
うらら
「(涙を拭いながら)……結局、ゲストを呼んでも
別の意味でめちゃくちゃ疲れるんだけど!!!
私の喉と心を休ませるためのゲスト企画じゃなかったの!?
完全にツッコミの過労死ラインを越えたわ!!」
うらら
「それでは、次回の『起動させないしガソタム』もどうぞ
お楽しみに……。大人のリアルなダジャレとパロディの闇に
怯えながらお待ちしています。古谷うららと、」
野田
「内閣府特命担当官の、野田輝でした。
皆さま、また本編でお会いしましょう」




