第58話:絶句のハンガー、あるいは教育の価値
機体を降りた私を待っていたのは、
異様なまでの静寂だった。
さっきまで息巻いていた尾田曹長も、
いつも冷静な真砂二尉までもが、
口をあんぐりと開けて、ただ私をぽかんと見ている。
「……? あの、二人ともどうしたんですか?
私のジャージ、どこか変でした?」
あまりの視線に居心地が悪くなって尋ねると、
野田さんが私の肩に手を置いて溜息をついた。
「……いや。多分、君との操縦技術の差に
言葉を失っているだけだろう。
今の演武は、それほどまでに完璧だった」
野田さんの言葉に、真砂さんはハッとしたように
我に返り、悔しそうに拳を握りしめた。
「麗指導官……。今の動き、
私には、機体と貴女が一体化しているように見えました」
「そんな大袈裟な。……でも、真砂さんなら、
あのガソタムのシミュレーションをやり込めば、
すぐにこれくらい動かせるようになると思いますよ」
私は、バロとの地獄の特訓を思い出して
少しだけ身震いしながら続けた。
「あの『お節介なAI』は、
性格は最悪ですけど、教える技術だけは本物ですから」
私の何気ない一言に、真砂さんの瞳に
再び強い光が宿る。
一方で、一度はバロに拒絶された尾田さんは、
「……ちっ、あのクソAIか」と
毒づきながらも、どこか複雑な表情を浮かべていた。




