第57話:黄金の演武、あるいは鋭き指摘
私はMk-IIの操作感に集中しながら、
空中で軽く拳を突き出し、回し蹴りの動作を加えた。
武術でいうところの「演武」のような動き。
鋼鉄の巨体は、私の呼吸に合わせるように
ハンガー内で鋭い旋回を見せる。
一通りモーションを確認し終えると、
私は静かに機体を停止させ、ハッチを開けた。
地上に降りると、そこには言葉を失った
野田さんたちが待っていた。
「……野田さん。一通り動かしてみましたが、
やっぱり問題はいくつかあります」
私はジャージの袖を捲りながら、
感じた違和感を淡々と列挙していった。
「まず関節のトルク配分。
パワーはあるけど、繊細な制御が追い付いてない。
それと、神経伝達のラグ。
脳で考えたことが機械に伝わるまでの『壁』が、
どうしても初代より厚いです」
尾田さんが転んだのも、真砂さんが苦労したのも、
その「壁」を力ずくで超えようとしたからだ。
「……なるほど。現場の人間には見えなかった
具体的な課題だな」
野田さんは私の指摘をメモし、力強く頷いた。
「今の君の操縦データは、すべて記録してある。
真砂や尾田のデータと比較して精査すれば、
Mk-IIの弱点も見えてくるはずだ」
お披露目会を前に、ようやく見えた改善の光。
けれど、私の胸にはまだ
「おじいちゃんの影」が色濃く残っていた。




