第56話:黄色い試練、あるいは本物の手応え
尾田さんの怒鳴り声を背中で聞きながら、
私はまだ無傷で佇む「黄色の三号機」を見上げた。
「野田さん。私も一度、乗ってみていいですか?
……今のままだと、何が悪いのか分からないし」
私の申し出に、野田さんは一瞬驚いた顔をしたが、
「……ああ。君の感覚で評価してくれ」と頷いた。
私は一度更衣室へ行き、持参したジャージに
急いで着替えてから、再びハンガーへと走った。
あのピンクのスーツを着なくても動くという、
このMk-IIの性能を、自分の体で確かめるために。
私はタラップを登り、三号機のシートに座った。
バロの毒舌も、脳をかき回される感覚もない、
静かで無機質なコックピット。
メインレバーを引くと、機体が重々しく目覚めた。
「……。あ、本当に動く」
レバーを入力してから駆動系が動き出すまで、
確かにわずかな「タイムラグ」は感じる。
けれど、私は慎重にそのズレを感覚で埋めた。
まずは右腕。次に左腕。
そのまま、スッと片足を前に出してみる。
「え……。すごい。古谷指導官、
真砂二尉よりも動きがスムーズだぞ……!」
モニターを見ていた整備兵たちから、
どよめきが上がった。
たどたどしかった尾田さんはおろか、
訓練を積んだ真砂さんよりも、
Mk-IIは私の意思に滑らかに追従していく。
ジャージ姿の女子高生が、ただ座って
軽く動かしただけ。
それだけで機体は、まるで生命を吹き込まれた
かのように、ハンガーの中を優雅に歩き出した。




