第55話:操縦者の咆哮、あるいは傲慢の矛先
緊急停止した赤いMk-IIから、
ハッチを蹴破るような勢いで尾田さんが這い出してきた。
幸い、本人に目立った怪我はないようだ。
彼は荒い息をつきながら、地面へ降りるなり、
私の前までドカドカと詰め寄ってきた。
「……おい古谷! 何だあの欠陥機は!」
尾田さんは屈辱に顔を歪ませ、
ひしゃげた赤い巨体を指差して吠えた。
「俺の反応に機体が全然ついてこれないじゃないか!
あんな鈍亀、実戦で使えるわけがないだろうが!」
私は、自分に非があるわけでもないのに、
彼のあまりの剣幕に思わず後退りした。
「……。でも、尾田さん。
真砂さんはちゃんと乗りこなしてましたし、
無理な挙動をしたのは尾田さんの方で……」
「うるさい! 俺が求めているのは、
俺の『意思』をそのままトレースする力だ!
設計図を出したのはお前らだろうが!」
八つ当たりだと分かっていても、
彼の「ガッカリした」という本音が痛いほど伝わる。
「尾田、それ以上は指導官に対して不敬だぞ」
野田さんの静かな、けれど冷徹な声が割って入る。
尾田さんは苦虫を噛み潰したような顔で黙り込んだが、
その拳は、怒りで小刻みに震えていた。
おじいちゃんの「魔法」がない、ただの重機。
彼らが直面しているのは、
理想と現実のあまりに高すぎる壁だった。




