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第53話:削られた知能、あるいは訓練の差
二台のMk-IIが並んで動く様子を見て、
私はある「違和感」に気がついた。
真砂さんの青い機体は滑らかなのに、
尾田さんの赤い機体は、どこか動きが
ぎこちなく、たどたどしいのだ。
「……。これって、あのシミュレーターを
やったかどうかの差なのかな?」
真砂さんはバロの地獄の教育を受けていた。
私は気になって、野田さんに問いかけた。
「野田さん。Mk-IIには、バロがやっていた
あのシミュレーション機能は載ってないんですか?」
「ああ。開発スピードを最優先したのと、
予算を抑えるために、今回は搭載を見送った」
野田さんは苦渋の決断だったという顔で続ける。
「自律型AIの移植は技術的にも難易度が高い。
今は既存のフライトシミュレーターを
転用して訓練させているが……」
「……。でも、それじゃあ、
機体と心が繋がるような感覚は掴めないですよ」
おじいちゃんの作った「バロ」は、
ただのAIじゃなく、操縦者の脳に直接
語りかけるような、お節介な家庭教師だった。
それを「コスト」で削ってしまった代償。
Mk-IIがただの「大きな機械」に見える理由は、
そこにあるのかもしれない。




