第16話:学校中の視線と、私の誤算
学校に行くと、私は一躍、時の人になっていた。
昇降口に入った瞬間、突き刺さるような視線の束を感じる。
……昨日のニュース、みんな見ていたんだ。
教室までの廊下を歩くだけで、知らない下級生から、
「あ、ヘルメットの人だ」「昨日の涙、すごかったよね」
なんて、小声で囁かれる始末。
「うらら、あんたマジで歴史に名を刻んじゃったね!」
教室に入るなり、サキがスマホを片手に飛びついてきた。
画面には、泣きじゃくる私のアップがデカデカと映っている。
……やめて。そのあざとい顔、自分でも直視できない。
「聖女うらら、なんて呼ばれてるよ。もうサイン攻めじゃない?」
「……冗談はやめて。私はただ、静かに暮らしたいだけ」
私は引きつった笑顔で、自分の席に潜り込んだ。
有名になるのは、隠蔽工作としては最低の展開だ。
目立てば目立つほど、家の周りに人が来るかもしれない。
もし、窓の外から地下の排気口でも見つかったら?
冷汗が、背中をじわじわと濡らしていく。
みんなが私を『町の守護神』と崇めれば崇めるほど、
地下のガソタムの重みが、私の肩に重くのしかかる。
授業中も、窓の外を見れば工事関係者らしき車が通る度に
……まさか、安室さんが偵察に来ているの?
と疑ってしまう。
私は教科書で顔を隠し、深くため息をついた。
平穏を守るために戦ったはずなのに。
私の日常は、かつてないほど危機的状況に陥っていた。




