第48話:執事の正体、あるいは祖父への咆哮
玄関の扉を閉めた瞬間、私は草履を蹴り飛ばし、
目の前に浮かぶバロを指差して絶叫した。
「おじいちゃん!! いい加減にしてよ!!」
もう「バロ」なんて呼ぶ余裕もない。
私は興奮のあまり、振袖の袖を振り回しながら
ホログラムの胸ぐらを掴む勢いで詰め寄った。
「何よあの網! 初詣に兵器を仕込んで行く
女子高生がどこにいるのよ! 恥ずかしくて
お巡りさんの顔も見られなかったんだから!」
『お、落ち着いてくださいレイ様。
あれはあくまで護身用の、紳士的な……』
「どこが紳士的なのよ! 網で男を縛り上げて
引きずり回す晴れ着なんて、呪いの装備だよ!」
あまりの怒りに肩で息をする私を、
バロ……おじいちゃんは、困ったように
ホログラムの眉を下げて見つめた。
『……レイ様が、悲しい思いをされるのは
耐え難かったのです。あの男がサキ様の
バッグを奪った際、貴女様は泣きそうな顔を……』
「っ……。それは、そうだけど!」
おじいちゃんの「孫を泣かせたくない」という
あまりに直球で不器用な愛情。
それをぶつけられて、私の怒りの矛先が
少しだけ、ぐらりと揺らいでしまった。
「……でも、次は絶対に相談して。
勝手に私を武装化するのは、もう禁止!」
私は最後にもう一度だけ釘を刺し、
重い晴れ着を脱ぐために、
ドカドカと自分の部屋へと向かった。
うらら
「皆さま、いつも『起動させないしガソタム
〜おじいちゃんが地下にガンダムみたいな遺産を
残していった件〜』をお読みいただき、本当に
ありがとうございます! 本編でガソタムの存在に
怯え、周囲の壮大すぎる勘違いに毎日胃を痛めて
おります、主人公の古谷うららです!」
(パチパチパチパチと、スタジオに虚しく響く
一人拍手の音)
うらら
「えー、読者の皆さま。私は前回のあとがきで、
身を以て一つの真実に辿り着きました。我が家の
AI執事なんて物騒なゲストを呼んだところで、
お見合い写真だのL25だの、余計な爆弾を落されて
私のツッコミ体力が限界を迎えるだけである、と!!」
うらら
「もう嫌だ! 私はあとがきで喉を休めたい!
普通に女子高生らしくキャッキャウフフした
可愛いトークをして終わりたい! というわけで、
今回は本当の意味での癒やしゲストとして、私の
大切な親友の2人を呼んでいます! どうぞー!」
サキ
「はーい! うららの大親友、元気100倍の
サキだよー! やったー、ついにあとがき出られた!
読者の皆さま、いつも『ガソタム』を応援してくれて
本当にありがとねーっ!」
チカ
「お邪魔してます、親友のチカだよ。うららの
ツッコミ過労死ラインがマジでやばいって聞いたから、
バックアップに参戦しにきました。今日は私たちが
場を回すから、うららはのんびりチャージしてていいよー」
うらら
「サキ! チカ! 2人とも本当にありがとう……!
うう、持つべきものはやっぱり同世代の優しい友達だよ。
おじいちゃんの超科学とかバロの容赦ない業務連絡に
囲まれてたから、2人の声を聞くだけで私の汚れた
精神が浄化されていくのが分かるわ……」
サキ
「あはは! うらら完全に病んでるじゃん、ウケる!
……あ、そういえばさ、さっきから気になってた
んだけど。あそこの部屋の隅の暗がりで、四つん這い
になって、こっちを凄い形相でじっと見つめてる
不審なおじさん(?)がいるんだけど、あれ誰?」
チカ
「(部屋の隅をじっと見つめて)……うん、目が
完全に血走ってるし、口元がニヤニヤしてて超怖い。
うらら、あの生命体から放たれてる
『ヤバい興奮のオーラ』、完全に危険水域に達して
るんだけど。普通に考えてすぐ警察呼んだ方がいい
レベルじゃない?」
うらら
「(ハッと部屋の隅を見て顔面蒼白になる)あ、
アカン!!! 忘れてた!!! あれ、この作品の
作者さん!!」
サキ
「えっ!? あれが作者さん!? なんで四つん這いで
こっちをガン見してんの! ウソでしょ、なんか
鼻息荒くない!?」
うらら
「忘れてたわ……! 作者さん、『女子高生いいじゃ
ないですか』ってメモに一言だけ書いて警察呼ばれ
かけるタイプの本物の変態だったのよ! いつもは
人見知りで照れて物陰に隠れたりしてるのに、
『現役の女子高生が3人も同じ空間に集まった』
せいで、限界突破して理性が消し飛んでるのよアレ!!」
チカ
「なるほどね。あ、手元に落ちてる言い訳メモを
読んでみるよ。……『うおおお! 女子高生が3人!
キャッキャウフフしてる! 絵面的に最高!
むさ苦しい男の戦場よりこれ! 役得! 役得ゥ!!』
……だって。うん、言い訳の余地が一切ない、
純度100%の変態だね」
うらら
「チカに純度100%の変態って断言されてる
じゃないですかーーーーっ!!! 誰か、今すぐここに
警察と麻酔銃を持った専門家を呼んでください!!!」
サキ
「わーっ! 作者さんのメモの文字、興奮のあまり
線がガタガタになってるよ! 感情がグラフに表れすぎ
でしょ! 怒濤の勢いで次の文字をタイピング
しようとしてる!」
うらら
「ちょっと作者さん! 鼻息荒くしながら、物凄い
スピードで次のキーボード叩き始めないで!?
女子高生3人のドタバタ劇を妄想してニヤニヤするの
やめて! 私がただの一般女子高生なのを
いいことに、変な変身ギミックで3人まとめて
服を粒子にしようとか絶対企まないでよ!?」
チカ
「これ以上こっちに四つん這いのまま前進して
きたら、防犯ブザー連打したあとに、その辺にある
重い辞書か何かを全力でフリスビーみたいに
投げつけて顔面粉砕するからね。おじさん、
ただちにその場に伏せて」
サキ
「チカ、冷静にめちゃくちゃ怖い脅迫するじゃん、
最高! あ、作者さんがシュンとして、部屋の隅の
暗がりへすごすごとバックしていったよ!」
うらら
「ふぅ……、はぁ……。もう本当に危ないところ
だったわ。……さて! このあとがきコーナー、
ゲストに質問をするのが恒例になってるから、
2人にいくつか質問してもいいかな?」
サキ
「お、いいよー! 何でも聞いて聞いて!」
チカ
「どうぞ。何でも冷静に答えるよ」
うらら
「ありがと! じゃあさっそく、サキに聞きたいん
だけどさ。本編で言ってた、『サキの気になる
別のクラスの男の子』のことなんだけど……実際の
ところ、どうなってんの?」
サキ
「え? あー……あれね。あれ、台本に書いて
あったから言っただけだよ?」
うらら
「……へ? 台本?」
サキ
「うん。別に気になる人なんて今誰もいないよ?
そもそも私、あのクラスの男の子の顔すらよく
知らないし」
うらら
「ちょっと待って、どういうこと!?
本編であんなに意味深に語ってたのに、あれ
台本なの!?」
チカ
「うん、うらら。っていうか、私たちが今まで
作中に言ったセリフ、全部台本だよ?」
うらら
「全部台本かーーーーっ!!!???」
サキ
「そうそう! 毎回、作者さんから『次の話は
これを喋ってください』って台本が送られてくるから、
私とチカちゃんはそれを読んで演じてるだけだよー。
本編の私たちのセリフ、1ミリも本心入ってないからね!」
チカ
「普通に考えて、ただのモブ親友である私たちが、
あんな絶妙なタイミングでうららの日常会話に現れる
わけないでしょ? 全部作者さんのプロット通りの
演出。今回のこのあとがきのセリフだって、手元の
台本通りに喋ってるだけだよ」
うらら
「嘘でしょおおおぉぉぉーーーっ!!! 2人との
あの何気ない日常の会話、私の数少ない癒やしだった
のに、全部おじさん(作者)が裏で糸を引いてた
お芝居だったの!? ……あ、じゃあもう一つ
気になってた質問なんだけどさ」
チカ
「何?」
うらら
「サキとチカの苗字って何ていうの?
本編で一度も呼ばれたことないから気になってて」
サキ
「あ、それ? 別に無いよ?」
うらら
「……無い?」
サキ
「うん、だって台本に書いてないもん。作者さんが
設定作ってないから、私たち下の名前しか与えられて
ないんだよねー」
うらら
「苗字すら作ってもらえてないモブだったの!?
……じゃ、じゃあさ、このメタ空間
だから聞くけど、2人の本当の名前は何ていうの?」
チカ
「いや、それは個人情報だから教えられないよ」
サキ
「ねー、さすがにプライベートな本名はNGでしょ。
私たち、仕事でこの作品に出演してる
だけだし」
うらら
「親友だと思ってたのにーーーーっ!!!???」
うらら
「何その急に引かれた強固なディフェンスラインは!?
『仕事で出演してるだけ』って何!? 私の家で一緒に
クリスマスパーティーやったり、初詣にも一緒に行って
あんなに楽しかったのに、私への友情は全部ビジネス
だったの!? 2人の本当の名前すら教えてもらえない
関係だったの、私たち!?」
チカ
「うらら、公私混同は良くない。ギャラは良いけど、
あくまでお仕事だから」
サキ
「あはは! というわけで、私たちのビジネスフレンドの
冷徹な真実も明かされたところで、今回の不定期更新
あとがきはここまで!」
チカ
「結論として、地下のガソタムの脅威だけでなく、
地上の作者の暴走や、冷え切った人間関係からも日常を
守らなきゃいけないうららは本当にかわいそうだね。
読者の皆さま、この哀れな主人公にぜひページ下部に
ある【ブックマーク登録】や、評価の
【⭐星を5つ】ポチッと押して、応援をお願いします」
サキ
「読者さんからの評価マーク(星)が増えたら、
作者さんが私たちの苗字を付けてくれるかも
しれないからね! だから次の出演シーン(台本)を
増やすためにも、高評価をたくさんよろしくねー!」
うらら
「(シクシクと泣き始める)……ううっ、喉が
疲れたとかそれ以前に、親友だと思ってた2人に
完全にビジネスとして割り切られてた精神的ショック
の方がデカすぎて立ち直れないんだけど……!!
私の数少ない心のオアシスだった友情の思い出が、
冷徹な大人の契約で消し飛んだわ!! もう誰も
信じられない!!」
うらら
「それでは、次回の『起動させないしガソタム』
第3章もどうぞお楽しみに……。友情の
闇に怯えながらお待ちしています。古谷うららと、」
サキ
「サキと!」
チカ
「チカでした。皆さま、また本編で会おうねー!」




