第46話:晴れ着の牙、あるいは一瞬の追跡
参拝を終えた私たちは、屋台が並ぶ賑やかな
通りで、焼きそばやベビーカステラの香りに
誘われながら歩いていた。
「あ、あそこのリンゴ飴、美味しそう!」
サキがはしゃいで駆け寄ろうとした、その時。
すれ違いざまの男が、乱暴にサキの肩を突き飛ばした。
「きゃっ!?」
サキが石畳に派手に転び、それと同時に
彼女の肩にかけていたバッグが男の手へ渡る。
「泥棒! バッグ取られた!!」
サキの悲鳴が人混みに響く。男はニヤリと笑い、
人混みを縫って猛スピードで逃走し始めた。
「待ちなさい……って、無理。走れない!」
私が追いかけようとした瞬間、
振袖の狭い歩幅と草履の不自由さに気づく。
この格好じゃ追いつけないと、諦めかけたその時。
カチッ、という小さな機械音が耳元で鳴った。
「え……?」
私の意思とは無関係に、振袖の裾が
ふわりと浮き上がり、足首のあたりから
隠されていた銀色の発射筒が顔を出した。
シュバッ!!
鋭い風切り音と共に、何かが弾丸のような
速度で男の足元へ向かって放たれた。
「な、なに!? 今、私の足から何か出た!?」
困惑する私を余所に、放たれた「何か」は
空中で網状に広がり、逃走する男の足を
正確無比に絡めとった。
盛大に前のめりに転倒する泥棒。
私は自分の晴れ着の裾をまくり上げ、そこに
仕込まれていた驚愕の機能に、ただ呆然とした。




