第43話:絹の魔法、あるいは崩壊の恐怖
九条さんのおかげで心配事が消えた私は、
ようやく晴れやかな気分で朝を迎えることができた。
そこへ、サキから待ちに待った誘いが入る。
『麗! 初詣に行こうよ!
駅に11時集合ね!』
「よし、準備しなきゃ!」
私がクローゼットを開けようとすると、
背後でバロが「お待ちを」と優雅に制止した。
『レイ様。新年の最初のご公務に相応しい、
特別な装いを用意しておりますぞ』
バロが指を鳴らすと、ベッドの上に
見たこともないほど鮮やかで美しい、
桃色の振袖がふわりと出現した。
「……ええっ、晴れ着!?
嬉しいけど、私一人じゃ着方なんて分からないよ」
私が戸惑っていると、バロは自信満々に胸を張った。
『ご安心ください。ガソタムの装着技術を応用した、
ナノマシンによる「自動着付け」を行います。
一瞬で完璧な新春の姫君へと変身できますぞ!』
その言葉を聞いた瞬間、私の背筋に冷たいものが走った。
「……。ちょっと待って。それって、
あの滑り台の時みたいに、ナノ粒子で作るってこと?」
『左様でございます。伝統と科学の融合ですな!』
「絶対に嫌よ! あのナノ粒子、
いつ結合が解けてバラバラになるか分からないじゃない!
神社の境内でいきなり消えたらどうするのよ!」
『おやおや、私の技術を信用いただけないとは。
少なくとも十二時間は維持できるよう設定……』
「『少なくとも』って何よ! 怖いから普通に着せて!
物理的な紐と布で、ちゃんとしたやつを!」
全裸での時間切れという悪夢を想像し、
私は全力でバロの「魔法」を拒絶した。




