第42話:聖女の先見、あるいは氷解の抱擁
ようやく三が日が過ぎた頃。
不安で押し潰されそうだった私の元へ、
九条エマさんが新年の挨拶を兼ねて遊びに来てくれた。
「麗さん、おめでとう。
……なんだか、顔色が優れないようだけど?」
九条さんの優しい声を聞いた瞬間、
私は堰を切ったように話し出した。
一人で抱え込むには、この秘密は重すぎたのだ。
「九条さん、実は……大変なことが分かったんです。
野田さんに渡した設計図、あれだけじゃ、
マークIIは自重で壊れちゃう欠陥機なんです!」
泣きそうな私の説明を最後まで聞き終えると、
九条さんは「ふふっ」と優しく微笑んだ。
「大丈夫よ、麗さん。
そんなに心配しなくても大丈夫。心配いらないわ」
九条さんは私の手を優しく握り、
安心させるようにゆっくりと頷いた。
「源造さんの性格は熟知しているわ。
だから野田さんには、事前にアドバイスをしておいたの。
設計図通りにはいかない部分が必ず出るはずだって」
「おそらく今頃、彼らは独自に軽量化を図るか、
別の合金を使って強度を上げるかして対応しているわ。
おじい様の完全な模倣ではなく、
自分たちの技術で立ち上がらせる道を選ばせたのよ」
その言葉を聞いた瞬間、私の胸を締め付けていた
鉄の輪が、音を立てて外れたような気がした。
「……よかった。本当によかった……!!」
私は堪えきれず、九条さんの胸に飛び込んだ。
彼女の温かさと、石鹸のような清潔な香りに包まれ、
ようやく私の正月が、本当の意味で始まった。
「九条さん、ありがとうございます!
もう、本当にどうしようかと思ってて……!」
子供のように泣きじゃくる私を、九条さんは
「いいのよ、いいのよ」と、
母親のような慈しみで静かに撫でてくれた。




