第40話:黄金の通帳、あるいは欠けた欠片
大晦日。私はコタツの中で、手元にある一冊の
通帳を見つめたまま、ガタガタと震えていた。
そこには、契約金と初年度の使用料を合わせた
合計「7500万」という数字が刻まれている。
『レイ様。大金を手にしたからといって、
無駄遣いは厳禁でございますぞ』
「……無理。怖くて1円も使えないわよ、こんなの」
私の言葉に、バロは慇懃に一礼して答えた。
『税金関係の手続きは、すべて私が処理しておきます。
レイ様が自由にお使いになる際は、
こちらの通帳から引き落とすよう設定いたしました』
ふとテレビに目を向けると、ニュース番組が
『次世代防衛機、開発決定』と大々的に報じていた。
まずは小ロットでの先行生産が始まるらしい。
画面に映る野田さんの凛々しい姿を見ながら、
バロがボソリと、不穏な独り言を漏らした。
『……ふむ。あの特殊合金も使わずに、
果たしてまともな機体が建造できるのでしょうか』
「え……? ちょっとバロ、何言ってるの。
特殊合金の作り方も、設計図と一緒に渡したでしょ?」
私の問いに、バロはさらりと言ってのけた。
『いいえ。お渡ししたのは「ガソタムの設計図」のみ。
特殊合金の製造方法は、教えておりません』
「はあああ!? じゃあ、野田さんたちが作る
マークIIって、どうなっちゃうのよ!」
『まあ、形は同じですから動くことは可能でしょう。
ですが、強度は並の兵器と変わりませんし、
しょっちゅうメンテナンスが必要でしょうな』
バロはどこか楽しげに、空中を漂っている。
『あの子のような「不壊の輝き」は、
そう安売りできるものではございませんから』
年越しの鐘が鳴る直前。私は、来年早々に
野田さんが怒鳴り込んでくる未来を確信して、
コタツの中で深く、深く溜息をついた。




