第35話:光の剥離、あるいは黄金の変身
「サキー! 大丈夫!?」
滑り台に消えた親友を心配して私が叫ぶと、
バロが居間の空間に、鮮明な空中モニターを
展開して見せた。
『ご安心を。こちらでリアルタイムの
換装シーンを……じっくりと監視できますぞ』
チューブを滑るサキの体は、最初こそ斜めに
降りていたが、途中で垂直の縦穴へと差し掛かった。
けれど、下から強力なエアーが出ているのか、
落下スピードは重力を無視して、
驚くほどゆっくりとした浮遊に変わる。
まるで無重力の中で踊っているような姿。
そこへ黄金の粒子が、ねっとりと絡みついた。
ナノマシンの光が、サキの冬服を繊維の
一本一本から静かに解いていく。
ニットが消え、スカートが光の塵となって
剥がれ落ち、一瞬だけ剥き出しになった彼女の
健康的な肢体が、スローモーションで映し出された。
次の瞬間、光の膜が吸い付くように彼女を包み、
イエローのスーツが体の凹凸を露わにしながら
ぴっちりと形成されていく。
「……。バロ。今の、カメラワークが
あまりにエロ……じゃなくて「変」すぎない?」
私が冷たい声で問い詰めると、バロは
満足げに電子的なため息を漏らした。
『何を仰いますか。これは重力制御と
換装プロセスを同期させた、芸術にございます』
芸術、という言葉をこれほど信用できないと
思った瞬間は、かつてなかった。




