第34話:禁断の変身、あるいは鋼の滑り台
「それじゃあ、地下の更衣室に案内するね。
みんな、着替えの準備はいい?」
私がみんなを促して立ち上がろうとすると、
バロがスッと前に出て、慇懃に制止した。
『レイ様。少々お待ちを。せっかくの聖夜、
ただ階段を下りて着替えるだけでは味気ないとは
思いませんか?』
「……。また何か、余計なこと考えてるでしょ」
私がジト目で睨むと、バロはどこか楽しげに
ホログラムの光を明滅させた。
『どうせならば、この「滑り台」を通るだけで
自動でスーツへと変身できる、特別な体験を
してみませんか?』
バロが指を鳴らすと、居間の床がスライドし、
地下ドックへ直結する巨大なチューブ状の
滑り台が姿を現した。
「ええっ!? 滑り台で変身!?
何それ、特撮ヒーローみたいで楽しそう!」
サキが目を輝かせて身を乗り出す。
真砂さんも「……滑走中の自動換装。
重力加速度を利用した合理的なシステムですね」
と、感心したように頷いた。
「ちょっと待って! 滑り台ってことは、
滑ってる間に服を脱がせるってことでしょ!?
絶対、おじいちゃんの趣味じゃないの!」
『人聞きが悪い。これはナノマシンの粒子が
瞬時に服を分解し、再構築する芸術ですぞ!』
バロは澄まし顔だが、モニターの奥の
おじいちゃんの魂が「見たい!」と叫んでいる。
止める間もなく、サキが「私、一番乗り!」と
チューブの中に飛び込んでいった。




